当事者意識は帆船の帆、目的意識は羅針盤

当事者意識が仕事の推進力になるというのは理解しやすいけど、目的意識が方向を定めるということは少し理解しにくいかもしれない。

「どんな仕事にも目的があり、その目的を最も効果的且つ効率的に成し遂げるのが仕事」とは、どういうことなのだろうか。

 

目的意識の例え話

僕は、若い人たちに目的意識とは何かを教えるとき、よくこんな例え話を使っている。

ある上司と、社員A、社員Bの会話。

 

上司 「これ、明日までにコピーを5部作って」

社員A 「はい、わかりました」

社員Aはその日のうちにコピー5部を上司に手渡した。

 

上司 「これ、明日までにコピーを5部作って」

社員B 「何に使うんですか?」(=コピーを作る目的は何ですか?)

「取締役会に提出するんだよ」

「取締役は5人ですけど、監査役の分は必要ないんですか?」

「あ!」

「執行役員や事務局の分も考えると15部ではありませんか?」

「そ、そうだ!15部頼む!」

「それに・・取締役のみなさんには、この資料の文字は小さすぎて読みにくいのではないでしょうか?A3に拡大しておきましょうか。今日中に作っておきますね。」

「よ、よろしく!」

 

あなたはどちらの社員と仕事をしたい?

アウトプット(仕事の結果)は、社員AはA4が5部、社員BはA3が15部である。

みなさんなら、どちらの社員と仕事をしたいと思うだろうか。

大抵の人は、社員Bと仕事をしたいという。

では、それはなぜ?と聞くと、「気が利くから」「気配りができるから」といった答えが返ってくる。

 

よく考えてみて欲しい。

社員Aは「明日までに、コピーを5部作る」という“目標”は達成しているのだ。しかも1日早く。

社員Aはダメ社員どころか、目標を前倒しで達成する、できる社員だ。

それなのになぜ社員Bと仕事をしたいと思うのかというのが僕の質問だ。

社員Aもできる社員だが、社員Bには気配りという+αがあるということ。

 

気配りができる社員を育てる

そこで問題。

あなたの会社(部署)に新人が入ってきた。その新人にも社員Bのようになって欲しい。

そこでその新人に、

「気配りをしろ!」

と言ったら、その新人は気配りができるようになるだろうか?

果たして社員Bのような行動ができるようになるだろうか?

 

合目的的に仕事をする

「気配り」を三省堂の大辞林で引くと「あれこれ細かく心を遣うこと」とされている。

僕は、仕事上の気配りができるかどうかの鍵は目的意識だと思っている。

社員Aと社員Bの違いは、“目標”だけでなく“目的”を考えたかどうかだ。

これを僕の新人時代の上司であるN課長は、「合目的的に仕事をしろ!」と言っていた。

すべての仕事に目的があり、常にその目的を意識し、その目的を効果的且つ効率的に達成しようとする行動が合目的的な行動だ。合目的的に仕事をして初めて、細かなあれこれに気づくことができるのだ。だから「気配りをしろ!」ではなく「目的を考えろ!」と言わなければいけない。

僕が上司なら、できる社員Aをさらに伸ばすためにこう教える。“目標”は、“目的”に近づくために立てる道しるべ。目的あってこその目標であり、反面、目標なくして目的に近づくことはできない。まず目的を考えろ、と。

 

目的を考えさせる

具体的に言おう。僕がいつもやっていること。

会議が召集される。まず初めに、会議の目的を板書させ、全員と一言一句を討議してから会議に入る。その目的から見て、出席者に過不足がないかを全員に確認する(各出席者に自分が出席している目的を考えさせる)。

僕に誰かが資料を持ってくると、目を通す前に「僕に資料を見せる目的は何だ?」と尋ねる。そうでないと僕がそれを見て何をしたらいいかがわからないから、と。それからおもむろに資料に目を通し始めるが、最初に目的が書いていなかったら、そのままつき返す。提案でも、報告でも、最初に目的が書かれていなければ読む意味は無いと言って。

当事者意識と目的意識は若手から経営層にまで必要である

僕は当事者意識と目的意識こそ、仕事の基礎中の基礎、基本中の基本だと考えている。

若手だけではない、中堅社員になろうが、管理職になろうが、経営層になろうが、レイヤーは異なっても帆と羅針盤が必要なことに変わりはないからだ。コピーをとる目的が、レイヤーが上がるにしたがって視座の高い目的に高まっていき、経営層になれば会社の存在目的即ちミッションへと昇華する。経営層は総じて当事者意識は高い。そうであるだけに目的を見失った経営は迷走し、ときに暴走する。サステナブルな経営に目的意識は不可欠なのだ。そして、目的意識の高い経営者はブレない。

 

ところで、先ほどの例え話。

社員Bはもちろん、社員Aも悪くない。いや、上出来だ。

悪いのは、“目標”だけ言って、“目的”を言わない上司の方なのだ。

 

「目標や目的を伝えることの重要性など、とうに分かっている!」という声が聞こえてきそうだが、分かっていることと、実践できることの間には大きな壁がある。

しかし、実践できるかどうかであなたの部下の仕事の質、成果は大きく変わってくるはず。

 

どんなポジションであっても、万人に取って「当事者意識」と「目的意識」を持てるかどうかが仕事の「成果」出せるか、出せないかに繋がってくるのである。


高野 慎一

Shinichi Takano

株式会社リクルートにて人事・広報を経て、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)の上場プロジェクト発足に伴い同社へ出向・転籍。不動産流通・賃貸事業で管理職を務め、2006年、同社執行役員に就任。グループ戦略室長・総務人事グループ長を兼務。同社の株式上場、管理部門創設、バブル崩壊後の不動産賃貸事業の黒字化、リーマンショック後の日本初の事業再生ADRなどで中心的な役割を果たす。株式会社ぎょうせいを経て、現在は日本交通株式会社取締役。2015年10月よりツクルバに参画。

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