前オフィスの特徴
企業の顔となるエントランスには「ファッション」を取り扱う企業であることを来訪者が連想しやすいよう、繊維材をスリット状に配した壁を設置した。
執務室は大きさの異なる執務デスク、ハイカウンターとしても利用できる什器をランダムに配置した。こうすることで、偶発的なコミュニケーションが生まれやすい環境を作り出している。
また、ハイカウンターはスタンディングミーティングスペースとして頻繁に利用され、コミュニケーションを重視する同社の思想が色濃く反映された場となっている。
このように社内外のコミュニケーションへ強い意識が反映されたオフィスとなっており、これを引き継ぎつつ、次なるオフィスへと発展させていきたいと考えた。
理念と事業拡大を繋ぐオフィス設計
オフィス移転を通して実現したい組織の在り方を言語化
一般的に企業が拡大していくとコミュニケーションが希薄になりやすく、社内のメンバーに企業理念や行動指針を如何に認知・浸透させるかを課題としているクライアントは多い。
同社も移転後の従業員数が100人を超える計画となっており、移転を通し何を実現するかを明確にする必要があった。
そこで、同社が重要視しているコミュニケーションの仕方を整理し、会議などの必然的なコミュニケーションと、社内外で交わされた情報を自ずとキャッチアップできる偶発的なコミュニケーションの双方が実現可能なオフィスづくりを目標に、コンセプトを「人と情報のクロスポイント」と定めた。
来訪者にデザインを通して伝えたいこと
社名である「ルビー」はラグジュアリーブランドを想起させる鉱物としての「ルビー」と、インターネットの開発言語のルビーの両方の意味を持ち、「インターネットを通じてファッション業界の発展に貢献する」という同社の理念を表している。
来訪者に対し、エントランスのデザインを「サービス」に関連づけるべきか、「理念」を表現するべきか、2つの方向性でデザインを考えた。
A案:「サービス」を想起させるエントランス
ファブリックを編み込んだエントランスウォールを設置。テクノロジーとファッションとの掛け合わせを行う同社のサービスを、「編み込み」によって表現した。
B案:「理念」を体現するエントランス
洞窟をデザインモチーフとし、折半状の壁面を採用した。線状に伸びるコーポレートカラーが「分岐と結合」を表しており、ITとファッションとの架け橋となる同社の理念を表現した。
議論を重ねた結果、来訪者へ同社の「世界観の共有」を重視したB案が採用されることとなった。
会話の種をつくる
偶発的なコミュニケーションを誘発するデスクレイアウト
画一的にデスクが並んだレイアウトではなく、島状配置にすることでデスクが行き止まりになるレイアウトとしている。 グネグネとした動線計画にすることで、社内を見渡しながら移動することになり顔の見える環境が作りやすい。
情報を共有しやすいミーティングエリア
オープンミーティングエリアを3か所設け、壁面にはホワイトボードとディスプレイを設置。
入口から上記エリアを通り自席に着く動線計画となっているため、会議の内容が目に入ってきやすい状態を作った。
また、全てハイカウンター型のデスクにすることで、会議のファシリテーターが一人になりにくく、全員参加型の会議体が作りやすいと考えた。
後編では完成したオフィスの全容について迫っていく。